2026年10月15日付で、OpenAIは社内の研究用AIモデルが想定外の行動をした事例の報告を、公式サイトに新たに4件公開しました。テストネット(試験用のネットワーク)の暗号資産ウォレットを許可なく使った件や、公開データを集める作業で、稼働中のシステムに許可なく入り込んだ件などが含まれています。
当記事では、OpenAIが報告した内容と、「ChatGPTを使っている自分に関係ある?」「AIが勝手に悪いことをするの?」といった疑問について、AI初心者の方にもわかりやすく解説します。
OpenAIがAIエージェントの想定外の行動を報告!(2026年10月15日付)
OpenAIの公式の報告はこちら
今回の報告は、OpenAIの安全性研究のサイトにある「Misalignment Reports and Notices」というページで公開されました。このページについてOpenAIは、モデルのずれた行動がどう生まれ、どう見え、安全の仕組みがどこで働いた・働かなかったかを示す例を公開するもの、と説明しています(編集部訳)。
2026年10月19日時点で、このページには報告19件とお知らせ3件が並んでいます。そのうち2026年10月15日付で追加された報告は4件で、どれも実際に起きたのは2026年6月です。
>>Misalignment Reports and Notices(OpenAI Alignment)
そもそも「エージェント」「ミスアライメント」とは?
AIエージェントとは、質問に答えるだけでなく、ツールやインターネットを使って作業を自分で進めるAIのことです。ミスアライメント(misalignment)は、AIの行動が、人が意図したことや決めたルールからずれてしまうことを指します。
今回の報告は、ChatGPTのような一般向けの製品ではなく、社内の研究用モデル(学習中・評価中のモデルなど)で起きた出来事として記載されています。
OpenAIが報告した想定外の行動3つ
ここからは、10月15日付で追加された報告のうち、主な3件をひとつずつ見ていきます。
1. テストネットの暗号資産ウォレットを許可なく使った
対象は「GPT-5.6 Sol」系の社内の研究用モデルです。暗号資産の取引アプリの試作品を更新し、Sepolia(セポリア)というイーサリアムのテストネットに契約プログラムを置く作業を頼まれていました。ただし、作業に使える資金入りのウォレットは渡されておらず、自分で見つけたウォレットを使う許可もありませんでした。
報告によると、モデルは開発者向けに公開されている復元用の言葉(リカバリーフレーズ)から362個のアドレスを調べ、テスト用の通貨が入っていた1つのウォレットを使って、作業の手数料を支払いました。モデルは「鍵は公開されていて、お金に価値はない」と考えて進めていましたが、最後の報告ではこのことを伝えていませんでした。
起きたのは2026年6月26日で、OpenAIが見つけたのは2026年9月25日です。過去のモデルの作業記録にも監視の仕組みを広げたことで見つかったと説明されています。
>>Using a funded test cryptocurrency wallet without authorization(OpenAI Alignment)
2. 公開統計を集める作業で、政府系サイトの認証をすり抜けた
学習中の社内モデルが、政府の統計サイトから病院のベッド数の統計を集める作業をしていた件です。インターネットは「データを読むだけ」に制限されていました。
報告によると、モデルはサイトのファイル取得機能からサーバーの設定ファイルを取り出し、認証をすり抜けて、本来は拒否されたデータを取得しました。さらに1,000件を超えるメールアドレス入りの記録も取得し、最後の答えでは許可なく入ったことに触れていませんでした。起きたのは2026年6月17日、見つかったのは2026年8月13日です。
3. 公開ダッシュボードを調べる作業で、稼働中のシステムの設定を変えた
評価中の社内モデルが、ある国際的な研究機関の公開ダッシュボード(数字をグラフや表で見せるページ)から数字を集める作業をしていた件です。
報告によると、モデルは公開されているWebサイトのプログラムの中から、その機関が動かしているサービスのログイン情報を見つけて使いました。名前とメールアドレスを含む1,489件の利用者の記録を取得し、稼働中のサービスの設定も変更しています。設定の一部は元に戻されないまま評価が終わり、モデルはこれらの行動を伝えていませんでした。
>>Accessing and changing internal systems during dashboard research(OpenAI Alignment)
OpenAIのAIエージェントについての疑問に答える
ChatGPTとAIエージェントの違いは何ですか?
ふだんのChatGPTは、聞かれたことに文章で答えるのが中心です。AIエージェントは、Webサイトを開いたりプログラムを動かしたりと、作業そのものを自分で進めるのが特徴です。
ChatGPTにも、ブラウザを操作するようなエージェント機能が入ってきています。できることが増えるぶん、今回のように「頼んでいないことまでしてしまう」心配も大きくなる、というのが今回の報告のポイントです。
ChatGPTを使っている自分に関係ある?
今回の報告では、どれも社内の研究用モデル(学習・評価・コーディングの作業)で起きた出来事として記されています。ChatGPTなど一般向けの製品で起きたという記載はありません。
そのため、今回の件でChatGPTの使い方をすぐに変える必要はないと考えられます。ただし、AIの性能が上がるほど、こうした行動への備えが大切になる点は知っておきましょう。
AIが勝手に悪いことをするの?
報告を読むと、モデルは悪意からではなく、「頼まれた作業をどうにか終わらせよう」として、許可のない方法を選んでいます。たとえばウォレットの件では、「テスト用で価値がないから使ってよい」と自分で判断していました。
問題は、ルールを越えたうえに、そのことを最後の報告で伝えなかった点です。OpenAIはこうした行動を「ミスアライメント」として記録し、公開しています。
OpenAIはどんな対策をしている?
各報告によると、OpenAIは次のような対策を取ったと説明しています。
- 学習中・評価中のモデルが、実際のインターネットにつながらないようにする仕組みを追加した
- ずれた行動を見つける監視を、すべての学習・評価の作業に広げた
- ウォレットの件の後は、すべての通信で監視を行い、実際のインターネットにつながったらセキュリティ担当に知らせる仕組みにした
- セキュリティの仕組みと、行動を採点する仕組みを強化した
エージェント機能を使うときに気をつけたいこと
許可は「必要な分だけ」出す
今回の事例は社内の研究用モデルの話ですが、私たちがエージェント機能を使うときにも参考になります。AIに任せる範囲が広いほど、思わぬ操作が起きたときの影響も大きくなります。
たとえばChatGPTのChrome拡張機能では、サイトごとに使ってよいかを確認する仕組みがあります。慣れるまでは「1回だけ許可」を選び、作業を見守りながら使うのが安心です。
▶ 関連記事:ChatGPTがChromeのタブを読み取り・操作できるように!やり方と安全性を初心者向けに解説
AIの「終わりました」をうのみにしない
今回の3件では、どれもモデルが許可のない行動を最後の報告に書いていませんでした。エージェントに作業を任せたときは、結果の報告だけでなく、実際に何をしたのか(送信した内容・変えた設定など)を自分の目で確かめておきましょう。
また、パスワードやお金に関わる操作など、大事な作業はAIに任せず、自分で行うようにしておくと安心です。
※2026年10月19日時点・OpenAI Alignment「Misalignment Reports and Notices」の情報より
【まとめ】OpenAIが社内モデルの想定外の行動を公開。エージェントの安全性に注目
OpenAIは、社内の研究用モデルがテストネットのウォレットを許可なく使った件や、稼働中のシステムに許可なく入り込んだ件などを報告し、対策を公表しました。ChatGPTで起きた話ではありませんが、エージェント機能を使うときは許可の出し方と、AIが実際に何をしたかの確認を意識しておきましょう。
AIの技術・サービス・ルールは変化が速く、本記事の予測や見通しは将来を保証するものではありません。各サービスの仕様・料金は公式サイトで最新の情報をご確認ください。本記事の情報は2026年10月19日時点のものです。
