Claudeで創薬が早くなる?Anthropicが6社との初期の成果を公表、書類の確認は89%短縮

Claudeで創薬が早くなる?Anthropicが6社との初期の成果を公表、書類の確認は89%短縮

2026年10月27日、Anthropicは、ClaudeをAIの相棒として使い、新薬の開発を早める取り組みの初期の成果を公表しました。

当記事では、Claudeが新薬の開発のどの段階をどう手伝ったのか、あわせて発表された研究者への支援の広がり、そして「AIで薬が早くできるの?」と思ったときに知っておきたい注意点を、AI初心者向けにわかりやすく解説します。

目次

AnthropicがClaudeで創薬を早める初期の成果を公表

新薬の開発は、たくさんの段階を順番に進む

新しい薬ができるまでには、病気の原因になるたんぱく質などの「標的」を選ぶ、薬の候補になる物質を設計する、候補を改良する、作り方と書類を整える、人での臨床試験(治験)を計画する、といった多くの段階があります。一般に、長い年月と大きな費用がかかる仕事です。

発表の中身

Anthropicの発表によると、新薬を開発する6つの組織(製薬・バイオの会社や投資会社)と組み、新薬の開発のさまざまな段階でClaudeを使ったとのことです。さらに、Anthropic自身も薬の開発に取り組んでいます。

項目内容
発表日2026年10月27日
発表したのはAnthropicのScience(科学)チーム
組んだ会社BigHat Biosciences、Bristol Myers Squibb(BMS)、Divergence Labs、Enveda、Generate Biomedicines、The Column Group(TCG)
Anthropic自身の取り組み買収したMithril Medicine(ミスリル・メディシン)で、まれな筋ジストロフィーの治療法を研究
成果の段階まだ初期。ほとんどは人で薬を試す前の段階(Anthropicの説明)

※2026年10月31日時点・Anthropic公式の発表より編集部が整理

>>Anthropic公式「Early progress on accelerating drug development with Claude」(2026年10月27日・英語)

Claudeは創薬のどの段階をどう早めた?公式の事例

発表された事例を、新薬の開発の段階ごとに整理すると次のとおりです。

段階組んだ会社Claudeがしたこと(Anthropicによる)
標的を選ぶThe Column Group狙う標的が開発に値するかを評価する仕組みを作り、45組の標的と病気の組み合わせで試した
候補を設計するDivergence Labs食物アレルギー向けに、約1か月で約3万5,000の抗体の設計案を作った
候補を設計するGenerate Biomedicinesがんの細胞療法の遺伝子の設計の一部を、約70%短くする案を出した
候補を改良するBigHat Biosciences約10週間で約1,010種類の改良版を作って試す流れを手伝った
作り方と書類Enveda製造の書類のチェックで、人の確認時間を89%減らした
治験の計画BMS初期の治験の計画を評価し、成功の見込みを見積もった

※2026年10月31日時点・Anthropic公式の発表より編集部が整理。数字は各社の研究室での試験などの結果

設計:短い時間で、たくさんの候補を出す

Divergence Labsでは、Claudeがチームの目標を細かな設計の計画にまとめ、ほぼ自動で約3万5,000の抗体(体を守るたんぱく質)の設計案を作りました。初期の試験では、アレルギーの原因に関わるIgE(アイジーイー)という物質にくっつく候補が3つ、IgEを免疫の細胞から引きはがす候補が20見つかり、そのうち3つは今の標準的な薬より多く引きはがしたように見えたとのことです。

Generate Biomedicinesでは、6人の研究者がClaude Codeを使い、がんの細胞療法(CAR-T)の遺伝子の設計の一部を短くする案を考えました。標準より約70%短い設計では、研究室の試験で、免疫の細胞が、がんの細胞を見つけるのに使うたんぱく質(受容体)を約10倍多く作れたと報告されています。

改良:大量のデータを読み直して、測り方まで見直した

BigHat Biosciencesでは、Claudeを研究室のデータの仕組みにつなぎ、2つの候補の改良案を出しました。途中で、それまで使っていた「熱への強さ」などの測り方が実態を表していないのではないかと考え、ClaudeとAnthropicの研究者が元のデータを分析し直して、新しい測り方を提案しました。BigHatの研究者がその方法で試したところ、主な予想は当たり、最も良い改良版は標的に10倍以上強くくっついたとのことです。

書類:人の確認時間を89%減らした

Envedaでは、薬を作る担当の化学者が、仕事の時間の最大75%を書類の作業に使っていました。製造の書類1,061ページのチェックで、Claudeは人が見つけた11件の問題をすべて見つけたうえで、人が見落とした7件も指摘し、人の確認時間は25時間以上から3時間未満に減りました。

国に出す書類の下書きもClaudeが作り、手作業だと約3か月かかるものが4時間でできたと報告されています。ただし、もう1つの書類では、人の確認で小さな間違いが1つ見つかっています。

治験の計画と、小さな会社の運営

BMSは、治験中の初期の薬の計画をClaudeで評価し、成功の見込みを見積もっています。BMSの担当者は、1回の指示からしっかりした最初の分析ができ、ふだんなら数日かかる判断の材料になったという趣旨を述べています(編集部訳)。

Anthropicが買収したMithril Medicineは、もともと1人で運営していた会社です。Claudeが外部の11の研究室との契約や段取り、実験の管理などを手伝い、まれな筋ジストロフィーの1つについて、治療のアイデアからマウスでの有望な結果まで18か月未満で進んだとのことです。

AI for Scienceも拡大、Claudeを使う研究の支援が広がる

AI for Scienceとは

AI for Scienceは、大きな成果が期待される研究に取り組む研究者に、Claudeを使うためのクレジット(利用料にあてられる分)を無料で渡すAnthropicの取り組みです。2025年5月に始まり、生物学・医学・物理学・化学・気候科学・数学などの数百の研究を支えてきたとしています。

2026年10月28日の拡大:20の財団・研究機関と組む

2026年10月28日の発表では、個人の研究者だけでなく、世界の20の財団・研究機関・研究グループと組む形に広げるとしています。

組み方主な相手(Anthropicの発表より)
クレジットを研究者に配るアルフレッド・P・スローン財団、シモンズ財団、シュミット・サイエンシズ、米国国立科学財団(NSF)、アメリカ化学会のCAS など
機関の中で使うウェルカム・サンガー研究所、フランシス・クリック研究所、EMBL、グラッドストーン研究所 など
研究プロジェクトに直接ブロード研究所のgnomAD(人の遺伝子の違いのデータベース)、ジョンズ・ホプキンス大学のAstroPath など

※2026年10月31日時点・Anthropic公式の発表より編集部が一部を抜粋。配るクレジットの額や申し込み方法は発表に書かれていない

多くの研究で、公開データやオープンソースのソフトなど、誰でも使える成果が生まれることを期待しているとしています。

>>Anthropic公式「AI for Science expands to foundations and research institutions」(2026年10月28日・英語)

生命科学の研究者と一緒に研究する「ゲスト研究者」も募集

2026年10月22日には、生命科学の研究者がAnthropicの研究者と直接組んで、Claudeで研究を進める「ゲスト研究者」の募集も発表されています。

項目内容
分野人の生物学、分子生物学、医薬品の化学、創薬、臨床の科学
期間8〜12週間(延長する場合もある)
対象大学・非営利団体・政府の研究室の研究責任者とそのグループ
費用Anthropicが自社のモデルを無料で動かす
成果一緒に公開し、データとプログラムもオープンにする
募集期間発表から約14日間(正確な締め切り日は書かれていない)

※2026年10月31日時点・Anthropic公式の発表より編集部が整理。発表日から数えると受付は11月上旬ごろまでの見込みで、締め切りが近い

>>Anthropic公式「Open call for guest investigators in the life sciences」(2026年10月22日・英語)

Claudeで薬がすぐできる?創薬のAIの注意点

まだ初期の成果で、人で試す段階ではない

Anthropic自身が、これらの研究はすべてまだ初期の段階で、ほとんどは人で薬を試す段階には来ていないと説明しています(編集部訳)。紹介された数字の多くは、研究室での試験の結果です。ここから実際の薬として使えるようになるかは、まだ分かりません。

最後に確かめるのは人

事例を見ると、AIに任せきりにはしていません。BigHatでは研究者が実験で予想を確かめ、Envedaでは人の確認でClaudeの書類の間違いが見つかっています。治験も、人が計画して人が行うものです。

薬ができるのはいつ?

Mithril Medicineの創業者はAnthropicで研究を続け、新しい研究もいくつか始める予定です。Anthropicは、今の薬の候補が引き続き良い結果を保てば、早ければ2028年の終わりごろに人での治験を始められる薬が出てくると見込んでいます。これは「うまくいけば」という条件つきの見通しで、薬が完成する時期の約束ではありません。Anthropicも、医療でAIの力を生かすには、Claudeをさらに改良する必要があると述べています。

【まとめ】Claudeの創薬の成果はまだ初期、今後の続報に注目

Anthropicは、6つの組織と組んで、標的選びから候補の設計・改良、書類、治験の計画まで、新薬の開発のさまざまな段階でClaudeが作業を早めた初期の成果を公表しました。あわせて、研究者にClaudeのクレジットを配るAI for Scienceも20の財団・研究機関に広がっています。ただし、ほとんどはまだ人で薬を試す前の段階なので、「AIで薬がすぐできる」とは考えず、今後の続報をチェックしておきましょう。

記事の情報について

AIの技術・サービス・ルールは変化が速く、本記事の予測や見通しは将来を保証するものではありません。各サービスの仕様・料金は公式サイトで最新の情報をご確認ください。本記事の情報は2026年10月31日時点のものです。

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この記事を書いた人

AIの最新ニュースを、AI初心者にもわかりやすく届けるメディア「AIオタク」の編集部です。ChatGPT・Claude・Gemini・Grokなど、各社の新しいモデルや機能の発表を毎日チェックしています。記事は、各社の公式ブログ・ヘルプページ・リリースノートなどの一次情報で事実を確かめてから書いています。運営者自身も、ひとり法人の仕事で記事作成やマーケティングにAIを毎日使っている、AIの「オタク」です。「結局、自分には何が変わるの?」がわかる記事を目指しています。

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