能動的サイバー防御とは?10月1日に法律が一部施行、個人や小さな会社に関係ある?

能動的サイバー防御とは?10月1日に法律が一部施行、個人や小さな会社に関係ある?

2026年10月1日、国家サイバー統括室(NCO)は、サイバー対処能力強化法と同整備法のうち「官民連携の強化」と「アクセス・無害化措置」の規定が施行されたと発表しました。いわゆる「能動的サイバー防御」を進めるための法律で、攻撃を受けてから守るだけでなく、国が先回りして攻撃を防ぐしくみを整えるものです。

当記事では、法律で何が始まったのか、そして個人や小さな会社に関係があるのかを、国の公式資料の範囲でやさしく整理します。

目次

能動的サイバー防御の法律が一部施行(2026年10月1日)

国家サイバー統括室の発表はこちら

国家サイバー統括室の報道発表資料「サイバー対処能力強化法及び同整備法の一部施行について」によると、2026年10月1日に施行されたのは次の2つです。

  • 官民連携の強化:国と民間が情報を出し合う協議会をつくり、基幹インフラ事業者による資産届出とインシデント報告を始める
  • アクセス・無害化措置:重大な危害のおそれがあるなど一定の要件を満たす場合に、攻撃に使われているサーバなどにアクセスし、不正なプログラムの停止・削除などを行う

施行の前日の9月30日には、関係省庁会議を開いて準備の状況を確かめたとしています。

なお、Q&Aハンドブックでは、国が集めた情報を分析して事業者などに届ける規定(分析情報・脆弱性情報の提供など)も同じ日に施行されたと説明しています。国の組織の見直しや、独立機関「サイバー通信情報監理委員会」の設置は、これより前にすでに施行されています。

>>サイバー対処能力強化法及び同整備法の一部施行について(国家サイバー統括室・PDF)

そもそも能動的サイバー防御とは?

国家サイバー統括室が2026年10月に公開した「サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック Ver.3.0」では、能動的サイバー防御を、国や重要インフラに対する重大なサイバー攻撃のおそれがあるときに未然に排除し、起きてしまったときには被害の広がりを防ぐための取り組みとして説明しています。

きっかけは、2022年12月に閣議決定された国家安全保障戦略です。サイバー安全保障の対応能力を欧米の主要国と同等以上に引き上げる目標が掲げられ、2025年5月16日に法律が成立、同月23日に公布されました。

法律の正式な名前

「サイバー対処能力強化法」は通称で、正式には「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律」(令和7年法律第42号)といいます。「同整備法」は、この法律に合わせて警察官職務執行法や自衛隊法などを改正するための法律です。

>>サイバー安全保障に関する取組(内閣官房)

法律で何が変わる?3つの柱と始まる時期

法律の中身は大きく3つの柱に分かれ、始まる時期がそれぞれ違います。

柱中身始まる時期
官民連携の強化基幹インフラ事業者の資産届出・インシデント報告、国と民間の協議会2026年10月1日
アクセス・無害化措置警察・自衛隊が攻撃に使われるサーバなどに対処2026年10月1日
通信情報の利用攻撃を見つけるため、国外が関係する通信の情報を国が分析2027年11月までに施行

※内閣官房国家サイバー統括室・内閣府「サイバー対処能力強化法及び同整備法について」(2026年10月)より

1. 官民連携の強化:基幹インフラ事業者に届出と報告の義務

対象になるのは、電力・水道・金融・通信・鉄道など、暮らしを支える「基幹インフラ」の事業者です。国の施行説明資料によると、15分野・258事業者が対象です。

これらの事業者は、特定の重要なコンピュータの製品名などを2027年3月までに国に届け出るほか、2026年10月1日からは、マルウェアの実行や不正アクセスなどのインシデントを見つけたときに国へ報告する義務を負います。Q&Aハンドブックによると、報告はまず速やかに速報を出し、30日以内に詳しい報告を出す流れです。報告をせず、国の是正命令にも従わない場合は200万円以下の罰金と定められています。

また、国と民間が情報を出し合う協議会も10月1日に設置され、基幹インフラ事業者を中心に約100組織が加わる予定とされています。国は資料の中で、届け出られた機器の情報と脆弱性(ソフトウェアの弱点)の情報を照らし合わせ、該当する事業者にすばやく注意を呼びかけることで、AIで加速する脆弱性の悪用にも対抗するとしています。

2. アクセス・無害化措置:攻撃に使われるサーバを止める

攻撃に使われているサーバなどにアクセスして、そこに入っている攻撃用のプログラムを止めたり消したりする措置です。行うのは、警察庁長官が指名した警察官と、内閣総理大臣の命令を受けた自衛隊です。

国の説明資料では、原則として独立した機関である「サイバー通信情報監理委員会」の承認を事前に得ること、サーバが国内にあるとはいえない場合は外務大臣と事前に協議することなどの手続きが定められています。

3. 通信情報の利用:始まるのはまだ先

攻撃に使われるサーバを見つけるために、国が通信の情報を分析するしくみです。こちらは2026年10月1日の施行には含まれておらず、国の説明資料では2027年11月までに施行するとされています(2026年9月の施行説明資料では「来年秋より施行」)。

>>サイバー対処能力強化法・同整備法の資料一覧(内閣府)

個人や小さな会社に関係ある?よくある疑問

個人や小さな会社に届出や報告の義務はある?

資産届出とインシデント報告の義務を負うのは、基幹インフラ事業者(法律では「特別社会基盤事業者」)です。国の資料を見る限り、一般の個人や、基幹インフラ事業者にあたらない小さな会社に、新しく届出や報告の義務が課されるものではありません。

ただし、パソコンやソフトウェアなどを作って売る側(供給者)には、利用者のセキュリティを確保するための設計・開発や、情報を継続して提供することに努めるよう求める規定が、サイバーセキュリティ基本法に設けられています。

メールやLINEの中身を国に見られるの?

通信情報の利用は、まだ始まっていません。始まった後のしくみについて、国の説明資料とQ&Aハンドブックでは、対象を国外が関係する通信(国外から国外、国外から国内、国内から国外)とし、事業者の同意によらずに取得するときは独立機関の承認を受けると説明しています。

取得した情報は、人が見ない自動的な方法で、IPアドレスなど、やり取りの本質的な内容ではない「機械的情報」のうち攻撃に関係するものだけを選び、それ以外は直ちに消去するとしています。メールアドレスなど個人を特定しやすい情報には、個人を識別できないようにする措置をとることも定められています。

法律には、通信の秘密その他の憲法が保障する権利と自由を不当に制限してはならないという規定も、国会での修正で加えられました。取り扱いは独立機関のサイバー通信情報監理委員会がチェックし、国会に報告することになっています。

小さな会社が国の情報を受け取る方法は?

Q&Aハンドブックによると、協議会の構成員以外にも広く対策を促すため、準会員のような位置づけの「協議会フレンズ」を設け、国から情報を届けることが予定されています。2026年10月29日時点で、参加の方法などの詳しい案内は確認できませんでした。

法律では、国がサイバー攻撃の被害を防ぐのに必要な情報を公表・周知することも定められています。まずは国家サイバー統括室の公式サイトの注意喚起をときどき確かめておきましょう。

>>サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック Ver.3.0(国家サイバー統括室)

私たちの暮らしへの影響と、今できること

電気や水道、銀行が止まりにくくなることが目的

国の資料では、守る対象として電力・水道・金融・通信・空港などの基幹インフラや、政府・自治体を挙げています。こうしたサービスへの攻撃を早く見つけて止められれば、停電や決済の停止など、暮らしへの影響を小さくできると考えられます。

国は、令和9年度の予算でAIを使ったサイバー対処能力の強化にかかわる事業も要求中だとしています。攻撃側も守る側もAIを使う時代に向けた準備といえるでしょう。

▶ 関連記事:AIでサイバー攻撃は金融の危機を招く?日銀・IMF・FSBの分析と個人の備え

個人がやることは今までと同じ

法律ができても、自分のスマホやパソコンを守るのは自分です。OSやアプリを最新にする、パスワードを使い回さない、不審なメールのリンクを開かない、といった基本の対策を続けましょう。

また、国家サイバー統括室は公式サイトで、NCOの名をかたった不審なメールや、金銭を求める不審な電話に注意するよう呼びかけています。「法律が変わったので手続きが必要」などと連絡が来ても、慌てずに公式サイトで確かめましょう。

▶ 関連記事:AIでサイバー攻撃を自動化!Microsoftが中国政府系とみられるグループの手口を公表、個人の対策は

※2026年10月29日時点・国家サイバー統括室の報道発表資料(2026年10月1日)、内閣官房国家サイバー統括室・内閣府の説明資料「サイバー対処能力強化法等の施行について」(2026年9月)・「サイバー対処能力強化法及び同整備法について」(2026年10月)、サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック Ver.3.0より

【まとめ】能動的サイバー防御は基幹インフラを守るしくみ、個人は基本の対策を

2026年10月1日、能動的サイバー防御を進める法律のうち、官民連携の強化とアクセス・無害化措置が始まりました。届出や報告の義務を負うのは基幹インフラ事業者で、通信情報の利用は2027年11月までに始まる予定です。私たち個人は、これまでどおりOSの更新や不審な連絡への注意を続けておきましょう。

記事の情報について

AIの技術・サービス・ルールは変化が速く、本記事の予測や見通しは将来を保証するものではありません。各サービスの仕様・料金は公式サイトで最新の情報をご確認ください。本記事の情報は2026年10月29日時点のものです。

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この記事を書いた人

AIの最新ニュースを、AI初心者にもわかりやすく届けるメディア「AIオタク」の編集部です。ChatGPT・Claude・Gemini・Grokなど、各社の新しいモデルや機能の発表を毎日チェックしています。記事は、各社の公式ブログ・ヘルプページ・リリースノートなどの一次情報で事実を確かめてから書いています。運営者自身も、ひとり法人の仕事で記事作成やマーケティングにAIを毎日使っている、AIの「オタク」です。「結局、自分には何が変わるの?」がわかる記事を目指しています。

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