証券口座の乗っ取り、どこまで補償される?主要14社の公式方針を比較

証券口座の乗っ取り、どこまで補償される?主要14社の公式方針を比較

証券口座の乗っ取り(不正アクセス・不正取引)は、金融庁の集計で2025年1月から2026年9月までに不正取引が1万件を超えました。被害にあったときにどこまで補償されるかは、証券会社と被害の時期によって大きく違います。

当記事では、主要14社の公式サイトに書かれている補償方針を、原文の引用と公式ページへのリンクつきで整理します。

目次

証券口座の乗っ取り被害はどれくらい?金融庁の集計

金融庁が各社からの報告をもとに公表している件数(2026年10月9日更新)では、2025年1月から2026年9月までの合計は次のとおりです。

項目2025年1月〜2026年9月の合計
不正アクセス件数19,252件
不正取引件数10,642件
不正取引による売却金額約4,372億円
不正取引による買付金額約3,837億円

月別では、2025年4月の不正取引3,033件が最も多く、その後は減っています。ただし2026年に入っても毎月のように被害が報告されています。

多くは、盗んだIDとパスワードで口座に入り、持ち株を売った代金で国内外の小型株などを買う手口です。なお、数値は各社からの報告にもとづく暫定値です。表の金額は利用者の損失額とは一致しないと金融庁は注記しています。

>>インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引にご注意ください(金融庁)

>>不正アクセス・不正取引の被害状況(金融庁・PDF)

なお、サイバー攻撃の自動化にAIが使われた例を、Microsoftが公表しています。AIと攻撃の手口については、関連記事でまとめています。

▶ 関連記事:AIでサイバー攻撃を自動化!Microsoftが中国政府系とみられるグループの手口を公表、個人の対策は

証券口座の補償は被害の時期で変わる/「50%」と「原状回復」の違い

きっかけは2025年5月の「10社申し合わせ」

証券会社の約款(利用規約)では、本人のIDとパスワードで行われた取引は、原則として会社の責任にならない(免責)とされています。それでも補償が行われているのは、日本証券業協会が2025年5月2日に、大手・ネット証券10社との申し合わせを公表したためです。

今般のフィッシング詐欺等による証券口座への不正アクセス等により、第三者がお客様の資産を利用して、有価証券等の売買等を行ったことにより発生した被害について、各社の約款等の定めに関わらず、一定の被害補償を行う方針とすることを申し合わせました。

出典:日本証券業協会(2025年5月2日・PDF)

対象は2025年1月以降の被害で、中身はID・パスワードの管理状況などを踏まえて「個別の事情に応じて対応する」とされています。

境目は「多要素認証・パスキーの必須化」

各社の方針を見ると、ログイン時の追加の確認(多要素認証)やパスキーを必須にした日を境に、扱いを変えている会社が多くあります。必須化より前の被害は割合や方法を決めて補償し、それ以降は「個別に判断」としているパターンです。

多要素認証は、パスワードに加えてスマホに届くコードなどでも本人確認するしくみ、パスキーはパスワードの代わりに指紋・顔認証などでログインする方法です。

「50%」は何の50%?

楽天証券・SBI証券・SBIネオトレード証券の「50%」は、「売られた株の代金の半分」ではありません。対象は、第三者が勝手に買った株から生じた損失(売った損や、持ち続けている場合の値下がり分)です。

そのため、もともと持っていた株を勝手に売られただけの場合は、50%の補償の計算には入りません(手数料の返金とお見舞金のみ)。一方、松井証券は「保有株を不正に売却された場合」も損害額の1/2を補償するとしており、会社によって定義が違います。

「原状回復」とは?

原状回復は、不正取引が行われる前の口座の状態に戻すことです。対面大手の多くが、必須化より前の被害をこの方法で補償するとしています。なお、個人が受け取った補償金は所得税が非課税で、確定申告は不要と、楽天証券・SBI証券・松井証券などが案内しています。

ネット証券7社の補償方針(2026年10月27日時点)

表は各社の公式ページをもとに編集部がまとめたものです。

証券会社必須化などの前の被害その後の被害
楽天証券被害額の50%が基本+手数料返金・見舞金1万円記載なし
SBI証券2025/10/25まで:原則50%+費用全額・見舞金1万円10/26以降:個別に判断
松井証券損害額の1/2+手数料全額返金2025/9/29以降:個別に判断
マネックス証券公式ページで確認を公式ページで確認を
三菱UFJ eスマート証券原状回復を含め個別に対応記載なし
GMOクリック証券基準は確認できず追加認証の設定次第で対象外も
moomoo証券基準は確認できず基準は確認できず

期間の区切りがない会社は、方針全体を左の列に記載しています。

楽天証券:50%が基本、保有株の売却は対象外

楽天証券は、被害額の50%を基本に金銭で補償し、売買手数料の返金と一律1万円のお見舞金を支払うとしています。被害額は、不正に買われた株の売却損と評価損の合計です。

なお、「お客様が元々保有されていた有価証券」の不正アクセスによる売却については、被害額算定の対象外とさせていただきます。

出典:楽天証券 公式(2025年7月25日・2026年2月18日更新)

いつまでの被害が対象か、今後の被害をどう扱うかは、このページには書かれていません。

SBI証券:2025年10月25日以前は原則50%、以降は個別

SBI証券は、2025年10月25日以前の被害を「原則、被害の50%の金銭補償」とし、各種費用は全額、一律1万円のお見舞金も支払うとしています。同日のパスキー導入を受け、翌日以降の扱いを改めました。

2025年10月26日以降の被害は、次のとおりです。

補償の有無および補償の内容については、お客さまごとのID・パスワード管理や弊社が提供するセキュリティ機能の利用状況など、その態様に応じて個々に検証のうえ決定する方針へと改めました。

出典:SBI証券 公式(2025年10月26日・11月20日更新)

松井証券:損害額の1/2、2025年9月29日以降は個別

お客様が保有されていた株式を不正売却されたケース、お客様の意図しない株式が買付られたケースともに損害額の1/2を金銭補償することを決定しました

出典:松井証券 公式(2025年7月25日)

手数料は全額返金です。2025年9月29日以降の被害は「お客様ごとの個別の事情に応じて決定する」と改めています。

>>不正取引での被害に関する今後の補償について(松井証券 公式)

マネックス証券:最新の条件は公式ページで確認を

マネックス証券は、日本証券業協会の10社申し合わせに参加している10社の1つです(同協会のPDFで確認できる範囲)。補償の具体的な条件は、編集部では公式ページの原文を確認できませんでした(2026年10月27日時点)。利用している人は、最新の条件を公式ページで確認してください。

>>セキュリティ(マネックス証券 公式)

三菱UFJ eスマート証券:原状回復を含め個別に

補償については、被害状況等を十分に精査したうえで、個別の事情に応じて原状回復を含めて対応させていただきます。

出典:三菱UFJ eスマート証券 公式(2025年7月28日更新)

GMOクリック証券:割合は確認できず、設定が条件に

GMOクリック証券の公式サイトでは、補償の割合などの基準は確認できませんでした(2026年10月27日時点)。一方、追加認証の必須化(2025年10月8日以降に順次取引制限)にあたり、次のように案内しています。

お客様がログイン時の追加認証を未設定のまま、または身に覚えのない追加認証に対して拒否をされなかった場合、もしくはログイン追加認証方法をメールとしていた場合、第三者の不正アクセスによる取引などの被害が発生しても補償の対象外、もしくは補償が限定的となる可能性がございます。

出典:GMOクリック証券 公式(2025年9月22日)

>>2025年10月8日以降の取引制限のお知らせ(GMOクリック証券 公式・2025年9月26日)

なお、同社のお知らせ一覧によると、2026年9月8日からパスキー認証を必須にし、2026年11月28日からはログインをパスキー認証のみにするとしています。パスキー導入後の補償の扱いは、公式サイトでは確認できませんでした(2026年10月27日時点)。

>>お知らせ一覧(GMOクリック証券 公式)

moomoo証券:補償の基準は確認できず

moomoo証券は、同社を名乗るフィッシング詐欺による不正取引の発生を公表していますが、公式サイトで補償の基準は確認できませんでした(2026年10月27日時点)。

>>弊社における不正取引被害の発生についてのお知らせ(moomoo証券 公式)

対面大手ほか7社の補償方針(2026年10月27日時点)

証券会社必須化などの前の被害その後の被害
野村證券2025/1〜6/28:最大で原状回復が基本6/29〜パスキー導入まで:個別(減額・なしも)
大和証券2025/1〜7/5:過失なしなら全額(原状回復)7/6以降:補償できない場合も
SMBC日興証券二要素認証の必須化前:原則原状回復以後:個別に判断
三菱UFJモルガン・スタンレー証券原状回復を含め個別に対応記載なし
みずほ証券原状回復を含む補償パスキー等の設定で対象外も
SBIネオトレード証券2026/1/9まで:原則50%+費用全額・見舞金1万円1/10以降:個別に判断
PayPay証券不正取引前の状態に戻す等パスキー等の設定で対象外も

期間の区切りがない会社は、方針全体を左の列に記載しています。

野村證券:6月28日までは最大で原状回復

2025年1月から当社におけるログイン時および取引時のワンタイムパスワードを必須化した6月28日までの間に不正取引の被害にあった当社のお客様口座については、最大で不正取引が行われる前の状態に戻すことを基本としつつ、お客様ごとの個別の事情に応じて対応することとし

出典:野村證券 公式(2025年7月29日)

2025年6月29日以降、パスキー認証の導入までの被害は個別に連絡するとし、管理状況などによって「補償の減額をする場合や補償ができない場合もあります」としています。

大和証券:7月5日までは過失がなければ全額補償

2025年1月より2025年7月5日(当社がログイン追加認証を必須化した前日)までに発生した不正取引については、お客さまに被害の原因となる過失が認められない場合は、全額補償(原状回復)を行う

出典:大和証券 公式(2025年7月25日更新・PDF)

7月6日以降の被害は、ID・パスワードの管理状況やセキュリティ設定などによっては補償できない場合があるとしています。

SMBC日興証券:必須化前は原則原状回復

ログイン時の二要素認証の必須化以前に、不正取引の被害に遭われたお客さまにつきましては、お客さまの被害状況を十分に精査したうえで、原則原状回復での被害補償を実施致しました。

出典:SMBC日興証券 公式(2025年8月4日・PDF)

必須化は2025年6月上旬から順次進められました。今後の被害は「個別の事情に応じて被害補償の可否や内容を検討」するとしています。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券:原状回復を含め個別に

補償については、被害状況等を十分に精査したうえで、個別の事情に応じて原状回復を含めて対応させていただきます。

出典:三菱UFJモルガン・スタンレー証券 公式(2025年7月28日更新)

みずほ証券:原状回復を含む、パスキーが条件に

お客さまにおけるパスキー等のセキュリティ設定の状況、その他の個別事情等によっては、補償の対象外とさせていただく場合がございます

出典:みずほ証券 公式(2026年2月9日更新)

同じページで「原状回復を含む被害補償を実施しております」としています。

SBIネオトレード証券:2026年1月9日以前は原則50%

SBIネオトレード証券は、2026年1月9日以前の被害を、SBI証券と同じく「原則、被害の50%の金銭補償」(各種費用は全額・お見舞金1万円)としています。

パスキーを導入した2026年1月10日以降の被害は、次のとおりです。

補償の有無および補償の内容については、お客さまごとのID・パスワード管理や弊社が提供するセキュリティ機能の利用状況など、その態様に応じて個々に検証のうえ決定する方針へと改めました。

出典:SBIネオトレード証券 公式(2026年1月10日)

>>補償方針(2026年1月9日以前に発生した被害)(SBIネオトレード証券 公式)

PayPay証券:不正取引前の状態に戻す等の補償

当社にてお客様のパスキー認証などのセキュリティ設定状況や被害状況を十分に確認のうえ、不正取引が行われる前の状態に戻す等の補償を実施いたします。

出典:PayPay証券 公式「不正アクセス等への補償方針」

端末やパスキーの設定状況によっては対象外になる場合があり、被害が確認された人には警察署への被害届を求めています。

証券口座の補償から外れないために、今できること

必須化より後の被害で、各社が判断材料に挙げているのがパスキーや多要素認証の設定状況と、ID・パスワードの管理状況です。

1. パスキー・多要素認証を設定する

金融庁は、証券会社がパスキーなどの強い多要素認証の提供を始めたら、速やかに設定するよう呼びかけています。みずほ証券やPayPay証券は、パスキーの設定状況によっては補償の対象外になる場合があると明記しています。

GMOクリック証券は、追加認証の方法を「メール」にしていると補償が限定的になる可能性があるとしています。会社がすすめる方法を選びましょう。

金融庁は、見覚えのある送信者からのメールやSMSでもリンクを開かず、ブックマークした正しいサイトからアクセスするよう案内しています。パスワードは使い回さないようにします。

3. こまめに口座を確認し、すぐ連絡

通知サービスを有効にし、身に覚えのない取引があれば証券会社の窓口に連絡して、すぐにパスワードを変更します。

4. 「補償の案内」をかたる詐欺に注意

大和証券は、同社の補償の案内をかたる不審な電話を確認したとし、補償の案内をかたるフィッシングメールにも注意を呼びかけています。補償の手続きは、公式サイトや公式アプリから確かめましょう。

▶ 関連記事:INTERPOLがディープフェイク詐欺に注意喚起!声にだまされない5つのサインと合言葉

※2026年10月27日時点・金融庁、日本証券業協会、各社公式サイトより

【まとめ】証券口座の補償は「設定しているか」が分かれ目に

2025年の被害については、多くの会社が50%や原状回復などの基準を示して補償を進めてきました。ただ、多要素認証やパスキーが必須になった後の被害は「個別に判断」とする会社が多く、設定していないと補償の対象外になることもあります。使っている証券会社の補償方針と、自分のパスキー・多要素認証の設定を、今のうちに確かめておきましょう。

補償の可否や内容は、各社が個別に判断します。最新の条件は、利用している証券会社の公式の案内で確認してください。当記事は特定の証券会社や投資をすすめるものではありません。

記事の情報について

AIの技術・サービス・ルールは変化が速く、本記事の予測や見通しは将来を保証するものではありません。各サービスの仕様・料金は公式サイトで最新の情報をご確認ください。本記事の情報は2026年10月27日時点のものです。

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この記事を書いた人

AIの最新ニュースを、AI初心者にもわかりやすく届けるメディア「AIオタク」の編集部です。ChatGPT・Claude・Gemini・Grokなど、各社の新しいモデルや機能の発表を毎日チェックしています。記事は、各社の公式ブログ・ヘルプページ・リリースノートなどの一次情報で事実を確かめてから書いています。運営者自身も、ひとり法人の仕事で記事作成やマーケティングにAIを毎日使っている、AIの「オタク」です。「結局、自分には何が変わるの?」がわかる記事を目指しています。

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